フレンチトーストの作れるについて
今日、ブログをひとつ作ってまで書きたかったことはこれだ。
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昨日の夕方、旦那が
「フレンチトースト食べたいんだけど、作れる?」と聞いた。
私は「作れるよ」と二つ返事をした。
ちょうど二人で食料品の買い物に来ていた。
「フレンチトースト作るのって何が要るの?何か買う?」
「分からん。調べる」
「え?分かんないのに作れるって言うの」
「まあ。たぶん作れるよ」
たった十五秒のあいだに二度も"作れる"と言ってから、クックパッドで『フレンチトースト 簡単』と調べて材料を斜め読みし「バニラエッセンスは、無いな、要る? たぶん有った方が贅沢な感じの味になる」「んー、いいや」「じゃあ牛乳だけ買えば作れる」「牛乳、はい」という会話をした。
この話には二つの前提が要る。
一つは、私は今年で二十七になる女だが今の旦那と同棲を始めるほんの二年前ぐらいまで、包丁やコンロはおろか炊飯器さえまともに触ったことがない、料理は出来ないというより知らないといった方が近いような人間だったこと。人生で料理したのは家庭科の授業が九割、残り一割はバレンタインデーの友チョコ作り(あの、溶かして固めるだけの)。
もう一つは、私がポンコツSEとして働き始めてもうすぐ丸3年目ということ。
この二つだけを頭に入れて聞いてほしい。
私がシステムエンジニアとして日々やっていることは、おそらく多くの人の想像するとおりの「お客の要望を聞いて、システムを提案し、実現する」というような仕事になる。営業のようにお客とやりとりを重ねるところから、持ち帰ってきたシステム要件を実装すべくプログラミングするまで幅広い仕事だが、概ねその中でも時系列で後ろの方が初心者のポジションとされ、徐々に先頭の方の仕事を任せられるようになるのが通常の流れだ。そこでは、幅広い知識と大局的な観点をもち、客自身の求める本質を汲み、さらに社内のリソースと照らし合わせた上での現実的な提案をできなければいけないからである。
数機能に跨がる複雑な改修を持ちかけられても、その場で「そうですね、実現は可能ですが時間はかかりますよ。この数字の仕様についてはもう少し詳しくお聞きしたいのですが・・・」と、あれよあれよと思ううちに話を進める上司はまるで自分とは違う生き物のように思える。が、ウーパールーパーのように呆けた顔で打ち合わせに同席する自分も残念なことに同じ人間なので、あと数年のうちには同じことが出来るようになることが求められている。
話をフライパンの上に戻そう。
私はフレンチトーストというものを知ってはいたが、それは母親が作ったのを2度くらい食べたことがある程度で、それにあまり好きな食べ物ではなかった。(きっと母親はそれを知っていて、それで2度くらいしか食卓に出なかったのだろう。)だから私はその僅かな経験で、卵とミルクの味と、食パンが浸して焼いてある甘い食べ物、ということだけを知っているに過ぎなかった。もしかしなくとも他にも材料があるはずだし、実はオーブンで作るものだったかもしれない。だとすると実家にはオーブンがあったが今の家にはない。それにも関わらず、私は
「作れるよ」と言った。
その裏では、冷蔵庫に卵が2個残っていたこと、冷凍庫にパンが凍らせてあるという貯蓄、もし生クリームが必要だったら牛乳で下方互換していただこうという算段、オーブンで作るお菓子のレシピを過去にトースターを駆使して作った経験、を一瞬のうちに脳内処理していた。そしてなにより、それらに裏付けられた「まあ、たぶん作れる」という、根拠より先の自信があった。
両手にビニール袋を提げてお店を出ながら、もしかしてこれがウーパールーパーから人間になるヒントなのかもしれない、と、己の小さな成長を噛み締めたのだった。
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ちなみにフレンチトースト、めちゃめちゃ美味しく作れてしまって拍子抜けした。材料にふくらし粉の類がないので分量は好きな割合でよいということは分かっていて、牛乳少なめ、砂糖はブラウンシュガーで量りもせず適当に作った。味見の手が止まらないスイーツで今まで作らなかったことを勿体なく思うほどだった。母親が作ってくれたのは牛乳臭かったんだろうな。
料理のことについては、また別のときに。
フレンチトーストの作れるについて。おわり。